Happy garden.【短編】
料理は好きだし、健吾の喜ぶ顔を思い浮かべながら楽しんで作ったおせちを、まさか知らない男と食べる羽目になるなんて、思いもしなかった。
改めて、今、自分のおかれている状況が変に感じる。
誠司さんはおせちをのぞきこんでた顔をこちらに向けた。
「これ、全部一人で作ったん?」
「うん」
「うわー、彼氏、もったいないヤツやな。こんなにうまそうやのに食べへんなんて」
なんて返したらいいかわからず、苦笑いした。
「いただきます」
誠司さんは手を合わしてから、パチンと箸を開いて、卵焼きをとった。
手を合わす人を久し振りに見た。
床に座ってるので足はあぐらだけど、意外と礼儀正しい人なんだな。
歳は訊いてないけど、きっとわたしより年上だ。
30歳くらいだろうか。
少しの年の差でも、親御さんの教えの違いってものはあるのかもしれない。
昔の人のほうがなんでも厳しいイメージがある。