Happy garden.【短編】
彼の故郷の味に近いものを作れたことは純粋にうれしい。
でも、彼にお母さんを思い出させてしまったことは良かったのかどうか。
彼の食べたい『故郷の味』、それは母親の味。
それを食べたことのないわたしがどんなに似せようと思っても、似るわけがない。
余計なことをしてしまったんじゃないか。
そう迷っていると、彼はほほ笑んだ。
「ありがとう」
その言葉で気持ちは浮上し、わたしもお雑煮を食べ出した。
温かいお雑煮はすすみ、椀の中身が半分になったころ、おせちをつまみながら誠司さんを見た。
彼の椀の中は空っぽだ。
「お雑煮のおかわりありますけど、いかがですか?」
「ホンマ? ちょうだい」
椀を差し出す誠司さんの顔はほころんでいた。
なんだろう、この気持ちは。
誠司さんのこういう顔がもっと見たい。
彼が喜ぶなら、彼のお母さんの味を覚えたい。