討竜の剣
「無理だな」

俺はタンブラーを頑丈な造りの木のテーブルに置いた。

ナハトの瞳が、やや見開かれる。

細心の注意を払っていないと気づかない程度の表情の変化だったが。

「何故…?」

ナハトの問いかけに。

「当然だろう」

俺は即座に答えた。

どんな噂を聞いて俺に会いに来たのか知らないが、俺は異名こそ知られて有望視はされているものの、まだ15歳の新米狩猟者だ。

竜種を仕留めた事など一度もない。

ましてや一個師団をも全滅させる強力な汚竜の相手など、俺一人で出来る筈もない。

それに。

「はぐれ竜はドーラの環境汚染が原因で汚竜に突然変異したんだろう?つまりはお前らが原因じゃないか…科学の発展とやらにかまけすぎたな」

俺はそう言って席を立つ。

…西の地には、フーガ地域と呼ばれる風の民の領土がある。

自然との共存を旨とする風の民は、環境を汚すドーラの民に敵愾心を抱いているというが…何となくその気持ちがわかるような気がした。


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