討竜の剣
ナハトを置き去りにして狩りに出掛ける。

さっき酒場の仕事依頼にあった、近くの森林に出没するらしい獰猛な魔物を標的に、散々歩き回る事一時間。

空はドンヨリと曇り始め、にわか雨が降り始めた。

しばらくは粘って魔物の探索を続けていたものの、雨は次第に本降りになる。

…今日は店仕舞いにするしかなさそうだ。

俺は踵を返し、すぐに街へと戻って。

「!」

街の入り口で、雨宿りもせずに立ち続けるナハトの姿を見つけた。

…ベレー帽も、黒のスーツも、灰色の髪も。

雨に濡れてしまっている。

それでも表情を変える事なく、彼女はその場に立ち続けていた。

瞳に湛える色は今も変わらない。

祈るような瞳。

ドーラを、民を、助けて欲しい。

貴族としての矜持も誇りも捨て、ただひたすらに助けを求める瞳だった。



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