討竜の剣
地響きを立てて、汚竜がこちらに近づいてくる。

一本の首が酸を吐き出す!

咄嗟に回避する俺。

その回避の隙を突いて、残る二本の首が襲い掛かる!

「このっ!」

一本の首を更に回避しつつ、もう一本の首に素早く斬りつけた。

痛みに咆哮を上げる汚竜。

傷つけられた事で、更に攻撃は激しくなる。

俺は紙一重で汚竜の牙を、酸をかわしつつ、何とか反撃の糸口を探していた。

三つの首はそれぞれが別の生き物のように俺を狙ってくる。

あの長い首で、よくもこれほどの複雑な連携がとれるものだと感心すらしてしまう。

時折隙を突いて剣を振るうのがやっとだ。

効果的な攻撃が出来る筈もなかった。

加えて汚竜の体表の粘液が剣を腐蝕させる。

何回かに一回は剣を鞘に納めなければならない。

その分だけ、俺は無防備に汚竜の攻撃をかわし続けなければならない。

こちらの効率が悪いのは言うまでもなかった。

やがて俺の体力にも限界が訪れ、このままでは敗北を喫するだろう。

汚竜に食いちぎられるのか、酸を浴びて骨まで溶かされてしまうのか。

以前も言った通り、狩猟において敗北とは死だ。

狩るか、狩られるか。

二つに一つしかない。

そして、俺の敗北は確実に、刻一刻と迫りつつあった。

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