討竜の剣
「ナハト!」

彼女の無事に、俺は笑みを浮かべる。

しかしそれには目もくれず。

「アキラ、鞘を汚竜の口の中に…!」

ナハトはまたも耳を疑うような事を言い始めた。

討竜の剣を唯一甦らせる事のできる鞘を、汚竜に食わせろって言うのか!?

驚愕の表情で見つめる俺に、ナハトは力強く頷いた。

「私を信じて…アキラ…!」

…俺は思い出す。

無表情で、何を考えているかよくわからない所もあって、驚かされる事も多いけど、彼女はいつだって俺の狩猟に貢献してくれた。

いつだって俺を勝利に導いてくれた。

だったら今度だって…!

再び咆哮を上げ、汚竜が大きな口を開けて食らいかかってくる!

俺は背中に背負った鞘を下ろし。

「お前に食わせるのはこれだっ!!」

汚竜の口の中目掛けて再生竜の鞘を投げ込んだ!

ゴクリと。

若干驚いたような反応を見せ、汚竜が鞘を飲み込む。

そして次の瞬間、早くもその効果は現れ始めた。

汚竜の全身が痙攣する。

まるで心臓の鼓動のように、汚竜の肉体が脈動する。

三つ首が苦しげにうねり、巨体が頼りなげによろめく。

「…汚竜とは、汚染物質を取り込んだ竜が突然変異を起こした姿…竜の本来の姿ではない…」

汚竜の異変を見つめながらナハトが言う。

「そして再生竜の鞘は…あらゆる傷、状態異常を元通りに再生させる力を持つ…つまり…」

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