討竜の剣
喉元に突きつけられる切っ先。

剣による決闘ならば、もう勝負ありだろう。

しかし。

「!」

突然クラーゼの足元から吹き上げる炎。

俺は咄嗟に飛び退いた。

「…平民風情が」

クラーゼの心情を表すかのように、炎がユラユラと揺らめく。

「魔法の一つも使えぬ身で、この私に盾突いた不遜を呪うがいい」

そう言って。

彼は目の前の炎をまるで自らの得物のように操った!

そう、彼はファイアルの貴族。

当然金に物を言わせ、魔法の力を手に入れていた。

クラーゼの操る炎の魔法は、大地を舐め取るようにうねりながら、俺を追ってくる。

これでも敏捷さには自信のある俺だったが、炎は輪をかけて高速で追跡してくる。

木々を縫い、生き物のように獲物である俺を追いかける炎。

驚いた事に、茂みも木の幹も木の葉も、森の中にあるものは一切燃やしていない。

クラーゼは俺を標的として決めた。

そのクラーゼの放った炎の魔法は、標的と決めたもの以外は焦げ跡一つ残さないのだろう。

「どうした小僧!威勢がいいのは口だけか!」

クラーゼの嘲笑が森に響く。

悔しいが剣で魔法に勝てる道理はない。

それがこの世界の理であり、厳しい現実であった。

…俺の剣が、ただの剣であったなら。

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