背伸びKISS
「はぁー」
椅子の背もたれに体重を預けてうなだれる。
あたしって相当馬鹿?
せっかく篤弥と
遊園地に来たのに
腰抜かして迷惑かけて。
…ほんと嫌になる。
「はぁー」ともう一回深いため息をついて、下げていた頭を上げた。
「なに…あれ」
一瞬、目を疑った。
あたしとうとう頭だけじゃなく目まで悪くなっちゃったのかな?
…ううん、違う。
あたしの両目の視力は
1.5あるもん。
見間違いなんかじゃない。
あれは絶対篤弥だ。
じゃあ…
隣にいる人は誰なの?
高いヒールに
大人っぽく巻かれた茶色い髪。
遠いところからでもわかる、篤弥の周りにいる二人が大人の女性だってことが。
あたしは
その場から立ち、
気付かれないように篤弥に近付いた。
だんだん聞こえてくる会話。
嫌でも耳に入ってくる甲高くて甘ったるい声。