背伸びKISS



「はぁー」


椅子の背もたれに体重を預けてうなだれる。



あたしって相当馬鹿?


せっかく篤弥と
遊園地に来たのに
腰抜かして迷惑かけて。

…ほんと嫌になる。





「はぁー」ともう一回深いため息をついて、下げていた頭を上げた。



「なに…あれ」



一瞬、目を疑った。


あたしとうとう頭だけじゃなく目まで悪くなっちゃったのかな?



…ううん、違う。


あたしの両目の視力は
1.5あるもん。


見間違いなんかじゃない。


あれは絶対篤弥だ。



じゃあ…
隣にいる人は誰なの?


高いヒールに
大人っぽく巻かれた茶色い髪。



遠いところからでもわかる、篤弥の周りにいる二人が大人の女性だってことが。



あたしは
その場から立ち、
気付かれないように篤弥に近付いた。



だんだん聞こえてくる会話。


嫌でも耳に入ってくる甲高くて甘ったるい声。



< 10 / 24 >

この作品をシェア

pagetop