背伸びKISS
「楽になってきたか?」
「うん…だいぶ」
休憩所で篤弥の肩にもたれかかっているあたし。
やっとお化け屋敷から解放された瞬間。
あたしの足はへろへろと力が抜け、その場にへたりこんでしまった。
……つまり、腰が抜けた。
お化け屋敷から解放された安堵感と、恐怖からだと思う。
そして篤弥におんぶされてここに来たわけなのだけど……
「ホント、見てて飽きね―よな」
「腹いて―」と言って笑っている篤弥を、むっとハムスターの頬袋みたいに膨らまして睨んでやった。
「だってさ、普通腰抜かすか?」
「う…」
…仕方ないじゃん!
かなり怖かったんだから!!
逆に、褒めてほしいくらいだよ…。
「…俺、飲みもん買ってくるから。ちょっと待ってて」
「あつ…」
咄嗟に立ち上がった篤弥の服の裾を掴んだ。
篤弥はフッと優しく口の端を上げたかと思うと、ポンとあたしの頭を撫でて。
「すぐ戻るから」
そう言って、
人だかりの中に
消えてしまった―…。