背伸びKISS




「ねぇ、遊園地なんか出てもっといいとこ行かない?」



「そうよ!あなたに遊園地なんて似合わないわ」


篤弥にべったりとくっついて、



あたしより一オクターブは高いんじゃないかってくらいの甘い声で篤弥に媚びを売っている。




きゃあきゃあと騒いでいる女の人なんて、


正直あたしの耳には
まったく入ってこなかった。



"遊園地なんて似合わない"



ただその一言だけが
あたしの頭を支配した。

まるで、遊園地に来てはしゃいでいる、


コドモなあたしとは釣り合っていないと言われた気がして。



ただただ悲しくて。



行くあてもなく、
篤弥に背を向けて
走り出した―…。







「はぁ、はぁ」


乱れた息が白い煙りとなって吐き出される。



…どれくらい走ったのだろう。


篤弥の姿なんて
全然見えなくて。


周りには幸せそうに
笑うカップルや家族。


「……さむ」


……寒いよ。
心も体も。



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