クライシス
十二月二十九日十四時二十五分東京都千代田区首相官邸
「三人の北朝鮮への潜入は完了いたしました」
警察庁長官の篠原が言う。
「抗ウイルス薬を持って帰るのが、元日か」
桜井総理が呟いた。
今日も首相官邸に内閣とオブザーバー達が集まって安全保障会議を行なっていた。
「雄介……あ、いや、市橋君は大丈夫ですかな?」
オブザーバー役の楠木教授が尋ねる。警察長官が頷いた。
「大丈夫です。彼にはある程度、諜報員としてのスキルを仕込んであります。彼ならばやってくれるでしょう」
その答えに楠木教授が満足そうに頷いた。
「帰りはセレス次官が専用機に乗せてくれる手配は間違いないんだな?」
桜井総理が外務大臣に聞く。
「ええ。了承を頂いております」
外務大臣が頷いた。だが、後ろに控えていた外務省の事務次官が冷や汗をかいている。そして、ゆっくり手を上げた。
「申し訳ありません……。今からそれを、申し上げようとしたんですがーー」
外務次官が言いにくそうに呟く。
「なんだ?」
桜井総理が鋭く睨む。
「実はーー」
外務次官が小さな声で語りだした。










< 157 / 274 >

この作品をシェア

pagetop