クライシス
平壌市内には、先代指導者の主導で設立されたコンピューター会社がある。国内のハード、ソフトを一手に担っている。
その会社から一台の車が走り出す。
「パソコンが古すぎるんだよ!」
センターの技師が苦々しい顔で呟く。
「まあ、そう言うな。保安員に捕まるぞ」
運転をしている技師が苦笑いをした。
「嫌々、これは国の批判では無いよ。システムの批判だ。……コンピューターウイルスが原因だろう」
「恐らくな。最近、我が国へのサイバー攻撃が増えたからな。脆弱なシステムはすぐに狙われる」
二人は車を走らせた。
しばらく走り、軍事研究所の近くの筋を曲がる。曲がった細い道に、保安員の制服を着た男二人が立っていた。
手には誘導灯を持っていて、車を止めようとしていた。
「おい、お前が変な事言うからじゃ無いか?」
運転している技師が呟く。
「馬鹿言え……」
だが北朝鮮では笑えない。いつどこに盗聴器を仕掛けられているか、分からない。
二人はゆっくり車を停車させた。
一人の若い保安員が近寄り窓を叩いた。運転手が窓を開ける。
「すまんが強盗殺人犯を追っている。見なかったか?」
保安員はいつも態度が横柄だ。
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