クライシス
キジはしばらくの沈黙の後に、「ふむ」と呟いた。
「私達の目的は市橋を救う、ただそれだけです。どうかそれを市橋に伝えて頂きたい、それだけです」
『一つ聞きたい……。よろしいか?』
 キジが返事の変わりに問い掛けた。
「はい」
『君が市橋君を救出したい理由は、職務の為かね?』
 キジの質問に河野は一瞬黙った。そして返事をした。
「その、通りです、私の仕事の為です」
 その答えにキジは「そうか」とだけ答える。
「ですが――」
 河野が続けた。
「私の仕事は部下の安全を守る事です。部下の生命を守れない上司には、誰も付いてきません……!」
 河野がそう言い放つとキジが笑った。
『わかった。君の言葉に従おう……!』
 キジがそう言うと、河野の瞳から涙が出て来た。河野は何としても雄介を救いたかった。
 それは部下の手柄を横取りをしていた、過去の自分に対する贖罪であったかもしれない。







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