クライシス
―― 一月二日十五時二十五分 北朝鮮内陸部――
 雄介は寂れた駅で列車を待っていた。後一時間待たないと行けない。もう二時間は待っていた。
 良い加減にしろよ、全く。雄介はボンヤリと駅の椅子に腰掛けていた。
 幸い駅は山間部の奥地で駅員すらいない。誰もいない場所で一人で電車を待つ。
 中々こう言うのも体験出来ないな。雄介は一人笑った。
 その時遠くから車を走らせる音が聞こえて来る。雄介に緊張が走った。雄介は辺りを見回す。隠れられる場所は無い。
 車の音は山間に響き、どんどん近くなって来た。
 逃げるか、それとも?その時、イザと成れば毒薬を飲めば良いと気が付くと、どうでもよく成った。運試しだ。そう思って駅のベンチに深く腰掛ける。
 車は徐々に近付いて、遂に姿を見せた。黒塗りの車。保衛省の車だ。
 雄介は笑った。運が無い。
 既に姿を見られている。逃げるのも疲れた。どれ、最後に北朝鮮の奴らがどんな対応をするか見てから、あの世に行くか。雄介はベンチに座る態度を変えずに、保衛省の車を見ていた。
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