クライシス
保衛員は制服を脱ぎ出した。
「さあ、この者と服を交換しなさい」
 チェがそう言った。
「え?」
「私はこの国では権力者だが、全ての者が私の味方では無い。君の所在を保衛省がキャッチしたと聞いて私は君の身柄を預かると保衛省の者に言ったのだ。彼等にしてみれば、私が君を拷問にかけると思ったのだろう」
 雄介は兵士から軍服を受け取る。
「外に居る者の殆どは私の言う事を聞かない。だから君が逃れる為には彼と服を変えて、保衛省の車で逃げなければならない」
 雄介は制服を着る。
「でも、アナタは?」
「私はここで気絶させられた振りをする。良いかね?保衛省が君の偽装に気付くのは、長く見積もって一時間だ。それ以上は無理だ」
 雄介は頷いた。
「急ぎなさい。分かったね?」
 雄介は制服に着替え終わった。
「一つだけ、聞きたい事が有ります」
 雄介の言葉にチェは頷く。
「今回のテロの原因は、首謀者は誰なんですか?」
 雄介の言葉にチェは軽く笑った。
「済まない、それは教える事が出来ない」
 雄介は少しガッカリした。
「だが――」
 チェが続ける。
< 209 / 274 >

この作品をシェア

pagetop