クライシス
雄介が疑問の元を考えていると、突然声が上がった。
「雄介」
 その声に振り向くと楠木が笑いながら近づいて来た。
「あ、教授どうしたんスか?」
「フォフォフォ。君に、ちょっとしたプレゼントを」
 教授はそう言って後ろを見た。雄介が教授の後ろを覗き込むと、そこには女が立っていた。雄介は目を見開く。
「由香……」
 由香が立っていた。
「雄介……!」
 由香は走り出すと、雄介に抱きついた。雄介も由香を抱きしめる。
「由香……」
「もう、アホ……。帰ってたら、帰ったって言うてよぉ」
「ゴメン」
 由香は泣きながら雄介を抱きしめた。楠木はニヤニヤ笑いながら木下を見た。
「さて、邪魔者は消えましょうか?」
 そう言うと木下は首をすくめた。楠木と木下はゆっくり立ち去った。
















< 238 / 274 >

この作品をシェア

pagetop