クライシス
「私は、この男からは何も聞かないし・・・君達は職務を忠実に実行していた・・・」


その言葉に二人は顔を上げた。


「だから戻りなさい」


二人はホッとした様に上役に敬礼をして、回れ右をして立ち去って行った。


それを見送った上役は二谷を見る。


二谷は少し身構えると、上役はニヤリと笑い・・・


「付いて来なさい・・・」


そう言った。


二谷は上役の後を付いて行く。


上役は夜の誰もいない道を歩いて行く。


北朝鮮の夜は暗い。


街灯がついて無いのだ。


二人は月明かりだけを頼りに歩く。


しばらく黙って歩くと、大通りに出た。


大通りには一台の車だけが停車していた。


その黒塗りの車の前まで来ると上役軍人は二谷を見た。


「乗りなさい」


その男から連行される感じを受けなかった。


なので二谷は素直に上役軍人が開いた後部座席に乗り込んだ。


乗り込んだ車の中は真っ暗であった。


乗り込んだ瞬間に同じ後部座席に人が座っているのが見えた。


その人物の顔は暗くて見えない。


そして、座席に座っている男は二谷に声をかけた。


「まっすぐ前を向いて座りなさい、絶対に私を見ない様に・・・」


そう日本語で言われたのであった。
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