私だけのスーパーマン
『お元気でしたか?すみれさん』
他のお客さんの接客を終えた泉さんがやって来る。
「はぁ…まあそれなりに」
グラスの水滴をおしぼりで拭う。
『図書館にもここにも来てくれなくて心配してたんですよ。
なんかあったんじゃないか、って。』
綾はいつの間にか隣に座っている女の人と親しげに話をしていた。
「ふふっ…何もないですよ」
なぜか笑う私。
無意識に笑顔を作ろうとしているのかもしれない。
『そうですか。
安心しました。
明日からまた図書館に遊びに来てくださいね?』
「はい。もちろん」
まだ笑うのは苦しかった。
だって、奥寺さんの奥さんや息子さんは泣いているのかもしれないんだ。
そう思うと自分が笑っていていいのかと、不安になった。