私だけのスーパーマン
「すみれ…知ってたんでしょ?
洋に、初めっから聞いてたんでしょ?」
責め立てるような声ではなく、
いたって冷静で感情がこもっていない声。
意味もなく、鳥肌が立つ。
「すみれも…笑ってた?
貴大くんにうまく利用されてるあたし見て、笑ってた?
自分は奥寺さんとか洋とか泉さんとかに囲まれて幸せで。
不幸な女、とか思ってた?
そうやって悲しそうな顔してるけどお腹の中じゃ…「違う」
止まらない綾の言葉を、自分の言葉で遮った。
「違う。
そんなこと、思ってないよ。
確かに、洋くんから聞いてた。
でも幸せそうな綾の顔見てたら本当のこと、言えなかったんだ。
ごめん…綾」
「そんな同情、いらない」
顔をあげた綾の頬は濡れていた。
そして目に生気がなかった。
「そんな同情、欲しくない」
綾は鞄を引ったくると席を立ち、足早に図書館を出て行った。
あっという間のことで止める隙がなく、綾の背中に置いていた手が宙に浮いていた。