かけがえのない唄

「今日のライブ来いよ」



と渡されたのは最前列のチケット。




───第2話









「うーやっぱりなかったー」



と講義が終わった後ぷっつんと切れるように圭織は沈んだ。




あたしと別れた後、散々探したらしい。一緒にいた時も、10件はCDショップを回ったのに。




あたしは、バックを確認して、圭織に差し出した。





「さて、これは何でしょう」




本当は渡さないと決めていた。だけどこんな圭織をみたら渡さずにはいられなくなったんだ。




「……ちょ、ちょっと!!何で妃菜が持ってるのよ!?」




圭織は差し出したモノが分かったらしく、大きな声で叫ぶ。



あたしは咄嗟に手を耳にあてた。




「えっと……帰りにふらっと寄ったCDショップにあった」




なんて嘘。
純がいるから、シークレット特典付きだろうとMoon LightのCDは普通に手に入る。



発売前、純に『一番特典が一杯ついてるやつ圭織にあげるからちょーだい』と頼んでおいたのだ。




なんかあんまり手に入らないと聞いていたから。





「ありがとー!!妃菜、女神さまに見えてきたー」




「いや、別に女神とかじゃないし」




あたしはやっぱりクールを装っていた。




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