テクノケイション
通り抜けると穴は、鈍軽な音を包み塞がった。


「ここまで来たら平気よ」


彼女は安堵する。


と、同時に訪れた静寂。


ピタリと止んだ音、ホリゾントライトを彷彿させる無段階のグラデーション。


「ありがとう。貴方が居なかったら私…」


「ここ、怪我してる」


脇腹からの軽い出血、あの黒尽くめとやり合った時か?


裂けた服の下のそれを確かめた彼女。


そうっと、


肉の裂け目を舌でなぞる行為。


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