群青の街
このヒトヨ町にしかバーはない。数あるバーの中でトップの権力と地位を保つ・『SUN』。美しさも聡明さもトップクラスのバーホステスたちの中の、さらに頂点に立つバーホステスが、ナミだった。

ナミはまだ22歳。まだ若く瑞々しい肌を持っているし、なんせ、顔は美しいだけでなく可愛さも持ち合わせている。茶色がかった瞳に、長いまつげ、くっきりとした二重に、ミディアムロングのダークブラウンの髪。ナミは自分の美しさをよくわかっていたし、どうすれば、その美しさがより引き立つかもわかっていた。
そしてナミは何より、その可愛らしい顔に似つかわないセクシーな体を持っていた。軽くEカップはあるだろう大きな胸、小さなお尻、引き締まったウエスト。ナミの顔から体から、すべてが男たちの欲望を挑発していた。
けれどそれだけでは、このバーのトップホステスは務まらない。
ナミは誰にも負けないように勉強して、賢さと情報を手に入れた。聞き上手でありながら、自分の意見も持ち、聡明さと情報力なら誰にも負けない。
それがナミの、確固たる人気の、要因だった。






その日開店してから、ナミは既に4つもの指名を受けていた。1日に10もの指名を受ける彼女にとっては、まだまだ忙しさなどは感じてはいなかったが、この4つ目の指名で、なんとも嫌な客に引っかかってしまったのである。

「ナミちゃぁん、今日こそさぁ……、いいだろ?言っとくけどオレ、マジで自信あるよ。すげーいいホテル見つけたしさぁ。………ね?」

そう言ってこの若い自信過剰な男は、さっきからナミの腰やら尻やらを撫で回していた。

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