【短編】少年と少女と美術館の龍
だけどそれは紛れもなく錯覚だ。


遠くの方、美術館のある方角から静寂を切り裂いてサイレンが鳴り響く。


それに続いて何本もの光の柱が右へ左へ忙しなく動き始めた。


ーーアーネル。


昼間アーネルに渡した紙にこの丘で待ってると書いておいた。


上手く行ったならこの丘にアーネルはやって来るだろう。


ふと怒号と幾つものライトが動くのが見えた。


完全に夜の静寂は姿を消し街は闇に喧騒を取り戻した。
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