【短編】少年と少女と美術館の龍
「ルーティエ!!」


声がした。真上から。


聞き慣れた、低くなく高くない中性的な声。


待ち望んだ声だ。


ルーティエは見た。長い漆黒に揺らめく躯の『龍』を。
そしてその背にまたがるアーネルを。


「アーネル!!」


叫んだ瞬間涙が出そうになった。だけど我慢した。


良かった。無事だった。安堵する。


でもまだ終わりじゃない。怒号を伴って追っ手がこちらに迫ってきているのだ。


足音は近い。
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