ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜

ドキドキしながら彼が口を開くのを待つ。




するとそれは意外なものだった。




「あのさ…、俺、結婚してるんだ…」




「え…?」




想定外の返事に困惑を隠せなかった。




…なんだ、


そうだったんだ…。




大事な人、いたんだ…。






彼とのこれまでのやり取りを全部思い出して、泣きそうになった。






…私、バカだ。


ひとりで勝手に舞い上がってさ…。




どうしよう…。


今言ったこと、全部撤回した方がいいのかな…。




「ごめんなさい…。あの、私、そうとは知らず、こんなふうに誘っちゃって…」


「いや…、別にそれは構わないんだけど…」


「ごめんなさい…、私帰ります…」




泣きそうになるのをこらえながら席を立つ。



…荷物を持って急いで部屋を出ようとしたときだった。




「ちょっと待って…!」




彼に腕をつかまれ、私はその場に立ち尽くした。




「あのさ…」




彼は少し間をおいて続けた。




「もし条件を飲んでくれるんなら、こっちも君に応えられると思うんだけど…」




「え…?」
< 11 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop