ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜
…が、
やはり彼の家族のことが気になったので、私は箸を動かす手を止め、彼にたずねた。
「あの、カゲウラさん…」
「…ん?」
「お子さんはいらっしゃるんですか…?」
「え…?」
彼も手を止め、私の方を見た。
「どうして…?」
「いや…、あの…、ちょっと気になって…」
職業柄子供と過ごしているせいか、子供がいる人だったら付き合えないと思っていた。
なんだかその子に申し訳ないし…。
けれど彼はきっぱり言った。
「いないよ」
「え…」
いない…?
「そうですか…」
私は胸を撫で下ろした。
彼は再び箸を動かしながら言った。
「それからその“カゲウラさん”って呼び方やめてくれる…?なんかぎょうぎょうしいよ…」
「え…?」
「名前で呼んでくれていいからさ。“トモシ”って」
「は…、はぁ…」
「ホンモウ先生は下の名前…、“マユコ”でいいの?」
「あ…、はい…」
「じゃあ俺も“マユコ”って呼ぶか」
そう言って彼は笑った。
その笑顔はホントさわやかすぎて、
やはり私を満たしてくれるように思えた。