ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜
そうなると今の劇団で活動できるのも今公演が最後だから、
私はガンさんに「この公演が終わったら劇団をやめるかもしれません」と告げていた。
ガンさんには「なんで?」と聞かれたけど、
「この春転勤するかもなんで」と言うと、
「なら仕方ないな」と彼はあっさり承諾してくれた。
それも少しさみしいものがあったけど、
今回はせっかくヒロインの座を射止めたわけだし、
ウシオとは確かに気まずかったけど、私は大役を演じきって、なんとか有終の美を飾ろうと思っていた。
練習中、
“アイダ”役のウシオから甘い言葉をかけられるとやっぱりドキッとすることがあったけど、
ウシオは“トーコ”にそういう言葉をかけているんだと自分に言い聞かせ、とにかく演技に集中した。
ウシオに抱きしめられるシーンでは、彼と体を重ねていた頃の記憶がフラッシュバックしたけど、
私は動揺を悟られないよう、とにかく心を落ち着かせるよう必死になっていた。