liftoff
店内は、冷房が効きすぎるほど効いていて、ノースリーブのわたしの腕には、一瞬で、鳥肌が立った。
他の人を見ると、盛装、まではいかないものの、軽いジャケットのようなものを身につけていた。
わたしはといえば、ビーチからそのままふらっときたかのような姿。もちろん、水着からは着替えたけれど、それでも、ラフな格好には違いなかったのだ。ちょっと肩身の狭い思いをしながら、わたしは、料理を待っていた。
と、程なくして、ピニャコラーダが運ばれてきた。わたしは、思わずそれを半分以上一気に飲んでしまった。喉が渇いていたのだ。それに、酔ってしまいたいという気持ちが、なきにしもあらず。残ったのを見て、ええい、と、残りも飲み干してしまった。
グラスを置いて、しばらくすると、また、ピニャコラーダが。
「I didn't ask it」
そう言うと、ウエイターは、肩をすくめて、わたしの斜め後ろを指差しながら、
「But he asked me ! --Don't say anymore ! OK ?」
小声でそう言って、強引に、押し付けるように、それをテーブルに置いた。
そして、ぷりぷりしながら、去って行く。
わたしは、飲み干したのと同じように果物の飾りがくっつけてあるその長細いグラスを見詰めて、そして、振り返って、彼の指差していた方向を、見た。
その窓際の席には、目元に優しく笑みを滲ませて、髪の長い男性が、一人で座っていた。
その髪は黒く、真っすぐ伸びている。手入れの行き届いた、女性顔負けの綺麗な髪。彼は、優雅に自分のグラスを持ち上げると、そっとそれを口元に運んだ。その一連の動作の美しさに、わたしは、思わず、魅入ってしまう。髪だけではなくて、指も、すごくきれい。タイ人だろうか。ううん、違う。欧米系? わからない。日本人? それはなさそう。観光客というより、住んでいる人っぽい。ウエイターとも顔見知りのようだし、あの仕草、もしかして、ストレートではないのだろうか。
いつの間にか、わたしは、勝手に彼のバックグラウンドを想像中。
そのとき、どん、っと大きな音を立てて、わたしのテーブルに、チャーハンのお皿が置かれた。はっとテーブルに向き直って見上げると、さっきのウエイターが膨れっ面で、腕組みをしている。
他の人を見ると、盛装、まではいかないものの、軽いジャケットのようなものを身につけていた。
わたしはといえば、ビーチからそのままふらっときたかのような姿。もちろん、水着からは着替えたけれど、それでも、ラフな格好には違いなかったのだ。ちょっと肩身の狭い思いをしながら、わたしは、料理を待っていた。
と、程なくして、ピニャコラーダが運ばれてきた。わたしは、思わずそれを半分以上一気に飲んでしまった。喉が渇いていたのだ。それに、酔ってしまいたいという気持ちが、なきにしもあらず。残ったのを見て、ええい、と、残りも飲み干してしまった。
グラスを置いて、しばらくすると、また、ピニャコラーダが。
「I didn't ask it」
そう言うと、ウエイターは、肩をすくめて、わたしの斜め後ろを指差しながら、
「But he asked me ! --Don't say anymore ! OK ?」
小声でそう言って、強引に、押し付けるように、それをテーブルに置いた。
そして、ぷりぷりしながら、去って行く。
わたしは、飲み干したのと同じように果物の飾りがくっつけてあるその長細いグラスを見詰めて、そして、振り返って、彼の指差していた方向を、見た。
その窓際の席には、目元に優しく笑みを滲ませて、髪の長い男性が、一人で座っていた。
その髪は黒く、真っすぐ伸びている。手入れの行き届いた、女性顔負けの綺麗な髪。彼は、優雅に自分のグラスを持ち上げると、そっとそれを口元に運んだ。その一連の動作の美しさに、わたしは、思わず、魅入ってしまう。髪だけではなくて、指も、すごくきれい。タイ人だろうか。ううん、違う。欧米系? わからない。日本人? それはなさそう。観光客というより、住んでいる人っぽい。ウエイターとも顔見知りのようだし、あの仕草、もしかして、ストレートではないのだろうか。
いつの間にか、わたしは、勝手に彼のバックグラウンドを想像中。
そのとき、どん、っと大きな音を立てて、わたしのテーブルに、チャーハンのお皿が置かれた。はっとテーブルに向き直って見上げると、さっきのウエイターが膨れっ面で、腕組みをしている。