da capo
思いっ切りドアを開けて、レイはヒロくんを呼んだわ。

ヒロくん、ヒロくんって狭い部屋何度も往復しながら。



だけどね、部屋に彼の気配がないのよ。

姿も見えなければ、ヒロくんの数少ない私物も見当たらなかった。

そういえば、楽譜を取りに戻るだけならレイが村上さんと話している間にバーに着いてもおかしくないのよ。

冗談でしょうって思いながら、レイは彼の一言を、彼の声を求めて探したわ。

レイが家に帰ると、ヒロくんは必ず、

「おかえり」

って言ってくれていたの。

前髪の間から、切れ長で哀愁漂う一重の瞳で見つめながらね。
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