好きだからBLの恋
「ね、奏多、ここの実験結果の資料は?」
「あ、こっち」

 聞かれた資料を優子に渡そうとして、優子が眉を寄せて首をかしげていることに奏多が気付く。

「・・・優子?」
「なあ、ここのこれって・・・」

 奏多と風人が同時に顔を上げると、優子が眉をひそめて風人を見ていた。

「ちょっと、しっ!」

 人差し指を立てて口の前に持ってきた優子に2人が止まる。

「・・・・お兄さん、お風呂出たかも。なんか足音がこっちに近づいてない?」

 優子に言われ、2人は耳をすませると、微かに足音が聞こえた。
 しかも、こっちらへ近づいている。

「げっ! 兄貴、こっちにくるかも」

 いつもは客がいると遠慮してくれるはずの兄が、居間に向かっていることに風人は焦った。
 優子に何か違和感を感じて、それを確認しようとしているのかもしれないと思い当る。

「兄貴、もしかしてここに来るんじゃねえ?」
「大丈夫、いくらなんでも居間には来ないでしょ。となりのキッチンにある飲み物か何かを取りに来たんじゃない? 奏多、私の前の席に座ってキッチンから見えにくくして」
「はいよ」

 優子に言われ、奏多がすんなりと席を移動する。

「風人、今私は男の子なんだよ? 今はレポートに集中して」
「あ、ああ・・・」

 いつだって度胸があるのは女の方である。
 すぐに自分のレポートにかかった優子に、奏多も風人も自分のレポートにとりかかった。
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