好きだからBLの恋
 久音はトーストをトースターにセットし、手際良くサラダを作り出す。
 器用で何でもそつなくこなす久音は、手馴れていないことでも効率よく進めることが出来るのだ。

 トーストにほうれん草サラダ。
 目玉焼きにカリカリのベーコン。
 ジャムに蜂蜜。
 アメリカンのブラックコーヒーがキッチンの簡易テーブルに並んだ。

 さっそく3人が食べている間、一朗も久音の足元でドッグフードを食べている。
 その久音はキッチン側に座り、今日の新聞を広げていた。

「兄貴、今日仕事は?」
「休みだ。本当は今日帰って来る予定だったからな、まる1日予定が空いた」
「へ~珍しい」
「・・・そうだな。これを期に、少し仕事を押さえようと思っているよ」

 女性嫌いで、仕事中毒の久音が、予定がないと言うのはかなり珍しい。
 それほど仕事漬けだったのだ。

 その久音が仕事をセーブしようと思っていると聞いて、風人が嬉しそうな表情になるのを奏多と優子がすぐに気付いた。

 お互いの足を蹴って、顔を見合す。
 言いたいことは目を見るだけで分かり合える2人は、風人に気付かれないようにこっそりと笑いあう。

 2人が思ったのは、やっぱり風人はブラコンということだ。
 
「レポートの進み具合はどうだ?」
「何とか昼頃には終わりそうだよ。どのみち、残りの2人の研究が一段落しないとこれ以上は無理だしね」
「そうか」

 一朗が食べ終わったのか、また優子の膝の上に戻って行くのを久音が視界に捕らえる。
 戻ってきた一朗を優子が嬉しそうに迎えているのを見て、久音はやわらかい表情をすると、また新聞に視線を戻す。
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