好きだからBLの恋
第二章
 久音は眉間にシワをよせ、不機嫌そうな表情で帰宅した。
 家族への帰宅の挨拶もそこそこに、飛び込むようにお風呂場へと入ると、いつもより手早く服を脱いでいく。

 今日の仕事は久しぶりに女性との打ち合わせだった。

 久音の女性嫌いは社内ではわりと有名なことだが、一歩外へ出ればあまり知られてはいない。
 そのせいで、ごくたまにではあるが、他社の担当が女性ということもあった。

 仕事は仕事。
 自分が女性嫌いだからと、それを他人に強制することはしない。

 よって、仕事相手の女性は久音が女性嫌いな事を知らぬまま、次期社長候補であり、見栄えのある久音に対し、それとなくモーションをかけてくる。
 そのせいで久音は今まで度々、不愉快な思いをしなければならなかった。

 久音の今日の仕事はまさにそんな状況だったのだ。

 もちろん、久音は相手から自分がどう思われているのか承知していたし、何度となくそういった経験をし、それとなくかわす術を身につけていた。
 よって、仕事に支障をきたすような事にはならないのだが、どちらにしても久音の忍耐が必要となってしまう。

 今日の仕事がまさにそうだった。
 打ち合わせ場所であった会議室は狭い上に、長時間一緒にいたせいで、体に相手の女性の香水がまとわりつき、久音の気分を最悪のものとしている。

 久音が女性嫌いではあっても、それはプライベートなことであり、当然仕事とは切り離す。
 それでも、仕事が終われば別だ。

 女性がつけていた甘ったるい香りは、久音をイラつかせるのに十分だった。
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