answerS
「…俺を殺す為だ、この銃でな」
そう言って暮羽さんが僕に見せたのは珍しくもないありふれた黒い銃。
そんな大量生産された銃なのに。
気づきたくなんかないのに。
僕にはその銃の持ち主は直ぐにわかってしまった。
何も入ってない筈の胃から溢れだすように吐き気が襲ってきて、僕は口を抑えてえずいた。
グリップの底に乱暴に貼られた絆創膏を僕はつい昨日、いや何時間か前にも見たばかりだった。
キズをつけてしまって可哀想だからと、愛おしい気にあの黒い銃を撫でていたチカの顔が鮮明に僕の頭に浮かび上がってきた。
ここに来てようやく自分の最低最悪な、取り返しのつかない過ちに気づく。
チカ…っ
チカ…、僕は何てことを君にさせてしまったのだろう。
暮羽さんに銃を向けて生きていられる訳がない。
暮羽さんにとって自分に歯向う人間は使えない人間であり“必要のない”人間だから。
チカは殺される。
僕が暮羽さんを悪い人だと思わせたから。
僕が何も考えずに自分の事なんか話すから。
僕がチカのお兄さんを殺したのは暮羽さんに命令されて殺ったことだと話したから。
真っ白で優しいチカはそんな僕を憐れに思いそれを信じてしまったんだ。