RIRIA
赤いアイツに気をつけて

出会いは揺れる船上で


社交界。

華やかで上品なドレスに身を包み、
コルセットを限界まで細く締め上げ、
貴族の男たちの目に自分がなるべく
良く映るように、そしてその貴婦人の
家が豊かであると示すために、
貴婦人たちは、自らを着飾る。

そして、
貴族の男も、さりげなく自分を飾り、
女性たちを値踏みするように眺め、
甘い言葉でダンスに誘い、
同じ貴族の男には、なるべく優雅に、
そして紳士らしく己のこと、
武勇伝などを自慢しあう。

そんな華やかで鮮やかで
太々しくてゴテゴテしたパーティーを、
貴族たちはこの季節、毎晩のように開く。


そして、そんな場所が、
自分の主人が大変に好む場所であるのだから
ため息をつかずにはいられない。


若者は、その長く美しい金髪を頭の上に結い上げ、仕立ての良いイヴニングコートに紺色のタイを身につけている。
その顔は女性ならば誰もが息を飲んで見とれるほど美しく整っている。
立ち振る舞いも完璧で、育ちの良い立派な若い紳士であると見受けられる。

その場にいる紳士たちとの決定的な違いは、その腰に、まるで若者を飾る装飾品のように挿されている剣である。

それは、この若者がこの場にどんな立場でいるかを示している。

フィルダーストン公爵家は、代々王家と親しく、王家の者を護る任に付いている有名な貴族である。

その長子である若者もまた、王家の人間を、幼い頃から守り続けてきた。

貴婦人方の羨望の眼差しを一身に受ける
その若者の名は、
リアトレーゼン・F・フィルダーストン。

王女専属の護衛として、その名を知らぬ者はいなかった。
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