RIRIA
「見て、リアトレーゼン様よ。」

「相変わらず素敵ね……」

リアトレーゼンがホールを歩けば、貴婦人たちは溜め息を零す。

今日のパーティーは有力貴族の所有する豪華客船の船上で、ムードを出すために少しだけ港と離れた海上で行われている。

その中でも、一番位の高い来賓が、リアトレーゼンの主人である少女なのである。
リアトレーゼンがエスコートする横で優雅に微笑んでいる、金髪を上品に結い上げ、派手すぎない、それでも一目で高価であるとわかる華やかなドレスに身を包んだ少女が、この王国の王とその后の間に生まれた、誇り高き王女、プリンセス・エリザベスその人なのであった。


「皆、あなたを見ていますよ。リア」

親しみの籠もった様子で、エリザベスが微笑む。

「いいえ、姫を見ているのでしょう。今夜の姫は一段とお美しいですから」

「本当によく出来た方ね、あなたは」

完璧な笑顔で微笑めば、エリザベスも嬉しそうな顔をした。

「それよりも、姫。今夜はなるべく私から離れないで下さい」

「あら、どうして?」

「この海は海賊が出るそうですので。私が守れる範囲に居ていただかないと」

生真面目にそう言うリアに、エリザベスは愉快そうに笑う。

「あなたに敵う方はまずいないでしょうから、私はそんなに心配していませんわ。
今日はダンスも踊ってはいけないの?」

リアは少し考えてから、

「お相手が私ではご不満ですか?」

と返した。

「いいえ、是非。あなたほどダンスの上手い方も、なかなかいませんもの」

クスクス笑って、エリザベスはドレスを摘んで持ち上げ、優雅にお辞儀した。

リアは跪いて、エリザベスの手を取り、口づけた。

「では、姫の貴重なお時間を頂きます」
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