RIRIA
……

「…5…4…」

「……」

「3…2…い…」

「わかった!行くから離れてくれ!」

もう限界……とばかりにリアはゼンから顔を背けた。

「そっか、残念、もう少しでキス出来たのになぁ」

いたずらっぽくそう言って、リアから手を離した。大きく安堵のため息をつくリアに複雑な気持ちになる。

(ちょっともキスしたいとか思ってないのかねぇ……)

だとしたらまだまだ心の壁は分厚いな、とゼンは内心不満に感じた。
とはいえ、うまく明日の外出を承諾させることが出来たことを思い出し、すぐに気分は弾みだす。

「じゃあ、明日、迎えに来るからな、めかし込んで待ってろよ」

「本当にバレないか……?」

まだ不安そうな顔をするリアに、今度は優しく微笑む。

「俺が渡した懐中時計、ある?」

リアは掛けてあったコートの胸ポケットに入っていた時計を取り出して、差し出した。

「海賊は嘘つきだからな。だから本当に破らないと誓える約束は、儀式で証明するんだ」

「儀式?」

「蓋を開けて」

美しい装飾の施された薄い蓋をゆっくりと開けると、凝った作りの時計が現れる。

ゼンはリアが時計を持つ手に、自分の手のひらを重ねる。

「我を慕う全ての部下と、先代達が築き上げてきた秩序と深い海、そして輝く月に誓って、汝とのこの約束を破らんと誓う」

ゼンがそう言い終わると、時計の秒針が止まった。

「約束を守ったらまた動きだすよ。破ったら、今まで先代の頭たちが守ってきた約束の分まで、俺に呪いが降りかかるって言われてる。ま、迷信かも知れねえけど」

「貴様……そこまで……」

「わかんだろ?」

くしゃっと、リアの頭を掻き回す。

「本気だってことだよ」
< 25 / 55 >

この作品をシェア

pagetop