RIRIA
胸がしめつけられるような感情は、もはやリアには止められなかった。
苦しくて、少しだけ泣きそうになった。
俯いて、囁く。

「わかった。信じて、待ってる……」

ゼンは一瞬驚きの表情を浮かべ、その後、満面の笑みで、「ああ!」と言って、出ていった。


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はぁ……と大きく息をついてリアはベッドに倒れ込んだ。
ドレスは脱いで厳重に隠しておいた。
先ほどまですぐ近くにいたゼンを思い出していた。あんなに、触れるほどに近くにいて、危うくキスまでされるところだった。
ぎゅ……と胸の辺りを握りしめる。
顔が火照ってくる。

だが、そんな風にゼンを思うたびに、リアの頭の中には王女や父の顔がちらつく。
守らなければいけない存在。
もう、恋をすることすら出来ない、彼のためにも。
自分だけが誰かに恋をするなんて、許されるわけがないんだ。

だから、ゼンを好きになってはいけない。
堅く目を閉じた。
次目を開けた時には、もう男に戻っていなくてはいけない。
だけどせめて、明日だけは、女としての自分で、過ごしたい。

最後にそんな願いを込めて、次にリアが目を開いた時には、あの焦がれるような胸の痛みは、静かに消えていた。
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