RIRIA
完璧なステップ。優雅な振る舞い。
そして見つめ合う2人には、
どこか艶やかさがあり、
会場の誰もが、2人のダンスに見入った。

「あの2人が、結婚なさるって本当かしら」

「陛下は、幼い頃から王女様のお相手はリアトレーゼン様と決めてらっしゃるそうよ」

貴婦人たちのそんな会話が耳に入った。
ふ、と微笑みが洩れる。
全くそんな話、
どこの誰から聞いてくるのやら。
そんなこと、あるはずがないというのに。
「リア、どうかしました?」

「いいえ、それより、疲れていませんか?」
「少しだけ……」

「では、少し休みましょうか」

くるりと回転した所でダンスを止めて、
再びエリザベスをエスコートして歩く。

給仕の者にワインを頼もうと、声を掛けた瞬間だった。


会場の灯りが一気に消えた。


人々のどよめきと共に、何かが割れる音。
女性たちの悲鳴が上がる中、リアはエリザベスを壁のほうへと寄せ、しっかりと身を寄せた。エリザベスも、リアのイヴニングコートを不安げに掴んでいる。

「かっ、海賊だっ!」

会場の紳士の誰かが、そう叫んだ。
< 3 / 55 >

この作品をシェア

pagetop