RIRIA
先ほどの男がニコと呼んだ大柄の男は、けらけらと笑った。

「こんなチビになにが出来るってんだ」

「それ以上近寄るな、愚か者」

リアが睨みつけると、ニコは愉快そうに笑いながら、リアの顎を掴もうと手を伸ばした、瞬間。

首筋に、ピタリと剣の切っ先が当てられ、動きを止めた。

剣を抜いたのもわからないほどの一瞬の出来事に、男は固まる。

「失せろ、この首はねられたいか」

ニコが、全く動けずにいた、数秒の沈黙を、一人の声が破った。

「いやぁ、噂に違わぬ瞬速の剣だねぇ」

真っ赤な髪に、対照的な青い目の青年が、ゆっくりとこちらに歩いてくる。

「……赤髪……。」

リアは、静かに呟いた。

「俺のことはご存知みたいだ。」

ニヤリと笑った青年の顔は、赤い髪に一瞬戸惑うが、意外に整っている。

それは、リアとは別の意味で有名な男だった。

噂に名高い、「赤髪のゼン」。
それは、この辺の海一帯を取り仕切る海賊の高潔な若頭の名前だった。
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