RIRIA
「確かにこの船が王女様の乗っている船と知らずに襲った俺たちも悪いが、ここらの海で、この時間に海に船を浮かべることがどういうことか知ってるはずなのに、貴族さん方を危険に晒した野郎にも非はあると思うぜ?」

リアが青年を睨みつけると、それを受け流すように青年は笑った。

「だからうちの仲間を離してやってくれねぇか。そいつの無礼はこっちでちゃんと罰しとくからよ」

リアは暫く考えて、二コの首から剣を離した。
二コは急いで仲間の元に戻る。

「頭の悪そうな男だ。もう少し教育するんだな」

「話がわかる奴で良かったよ。しかし、あの有名なリアトレーゼン公が、こんなべっぴんさんだとはな」

「私は男だ」

「……あ?まじかよ。そんな面して?そんなのありか?」

つかつかと歩みよって、ぐいと顔を近づけた。

あまりに飄々としているので、先ほどのように剣を抜けなかったリアが、顔をしかめる。

海賊には似合わない、上品な貴族の男のような香りが、リアの鼻をかすめた。

「……あんた……」

青年ななにか言おうとした瞬間、

「私に近寄るな!」

パァンと、青年の顔を、リアはぶった。
青年は数歩下がってよろけ、その隙に剣で斬りつけようとしたリアの攻撃は、今度は簡単に避けてしまった。


「いいねぇ、あんた」

ニヤリと笑って、青年は仲間に叫んだ。

「おい、帰るぞ!頂くもんは頂いた!」

海賊が次々と引き上げる中、青年はリアにしか聞こえないほどの声で

「またな」

と呟いた。
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