RIRIA
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落ち着きが戻った船内で、エリザベスの無事を確認した後、リアはこのパーティーを主催しているレオドーナ侯爵を問いただした。


「この海域に海賊が出るということを、あなたは知っていましたね?」

「……は……しかしながら、よもやこの船が襲われるとは……」

「しかし、夜に海賊が海に出ることは、この辺一帯の領主であるあなたならば知っていたはずです。」

「……申し訳ありません……」

責任の重さに打ち震える侯爵に、リアは内心舌打ちをしつつ、

「とにかく、いまは早く船を港に戻し、乗客の安全の確保を」

と言い放った。




「……リア……」

エリザベスが、寄ってくる。
求められたので、安心させるように
抱きしめれば、リアにだけ聞こえる
声量でエリザベスは小さく言った。

「大丈夫ですか……?あの海賊、気付いていらしたようだけれど」

「心配いりません。あの者が噂を立てたところで、誰も信用いたしませんでしょう。」

体を離して、エリザベスを見ると、

「無事で良かった、リア」

「あなたこそ、姫様」

他人には恋人同士にしか見えないようなやりとりを、自然に交わした。

(それにしても……)

港に着くまで、エリザベスを与えられた最高級の客室で休ませることにしたリアは、ソファに座ってぼんやり考えた。

(……あの男……ただ者ではない……)

そして、去り際に言われたことを思い出す。

(……いや……もう会うこともないだろう。)

立ち上がり、カーテンを少し開き、海上の月を見つめた。

(赤髪のゼンか……)

意外に若い男だったなと、一人ぽつりと呟いた。
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