陽だまり

わたしは、エールを送ってから受話器を置いた。
「父さんなんだって?」
優喜のそばまでもどると、涙目をこすりながら聞いてきた。
ああ、玉葱。

「今日遅くなるから、先に寝てろってさ。わたしやろうか? 目辛そうだね」

わたしが優喜とまな板の間に割り込んだら、さっと優喜がよけた。

「いいよ、おれがやるから」
「大丈夫よ、いくらわたしが料理が苦手だからって、これくらいできるから」

実を言うと、わたしはこんな料理を作る機会がふんだんにある家庭環境なのにもかかわらず、料理がさっぱりできない。

「おれ、人肉ドリアは食いたくない。ヒナはバター塗ってて」
「なにそれー」

何が人肉だ。いくら苦手と言っても、そこまで酷くないのに。
だけれど、手を切ったことは何度もあるので、あたしは優喜に任せることにした。
悔しいけれど、優喜は料理が得意なのだ。
なんでもトントン切ってしまうし、味付けを間違えたこともない。
家庭科の調理実習では、いつも褒められて帰ってくる。

今日だって、さあやろうとあたしが包丁を持ったら、すぐさまとりあげられて「バターを塗れ」と命令されたのだった。

「今日は、おれが作るっていったでしょ」
そう言いながら、てきぱきと料理をこなす優喜。手際がいい。
「まかせる」

いや、こういう態度でいままで来たから、腕があがらないのかもしれないけどね。

「せいぜいバターを塗りながら、それが自分の脂肪になるんだな~って考えてたほうがヒナのためだよ」


一言多い!
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