チョコと焼酎~
st.valentin
竜二は、そ知らぬ顔でテーブルの上の鍋や器を片付け始めた。
「そーだ。
今度会わせてよ」
竜二に笑いかけようとした顔が、少し引き攣った。
なんで?
「…できない」
片付けに忙しいって顔して、目も合わせないし、ジョークのひとつも無しか。
本気で付き合ってるから邪魔するな、ってこと?
そりゃあ、邪魔だよね。
私みたいのが側にいたら、誤解される。
そー言えば、カップルと間違えられて爆笑することもよくある。
もう、笑って済ませる訳にはいかないか。
「ねぇ、カノジョのとこに行かなくていいの?
あたしと居て、誤解されない?」
「まだデザート食ってない」
「だからさぁ……」
「ほれ、プリン食え」
竜二は、冷蔵庫からプリンとチョコを持ってきた。
「プリンより、焼酎」
陶器のカップに熱いお湯を注ぎ、芋焼酎を入れる。
「それ食べたら帰りな」
熱い焼酎をゆっくりと味わいながら、小さな声で言ってみた。
「チョコ食べるか?」
私の目の前につきだされた、竜二のチョコ。
口を開けて、少し舌を出す。
その上に乗せられたチョコ。