【短集・ホラー】白紙の小説


凍りつく体

いや、体じゃない
……………魂なんだ







「ここはもう死んだ者が行く病院……そこでキズを治し、死体マニアに売ります。隣の部屋の方は、死体マニアにもう売られましたよ」


………は、は…?
な……何だそれ……



「今あなたが目にしているのは、全て幻覚と言っても良い。魂が見ている幻なんです」

医者は目を伏せた



「あなたの周りには、人々がたくさん居て泣いている……すがりついているのはあなたの恋人でしょうか……」


それは
魂が体に入って
初めて見える光景…

でも死んでいるので
魂が体に戻っても
恋人も友達も
何も見えませんがね……


医者は呟いた




じゃあ、この

緊張と恐怖で震える心臓も

外に張り出されたカレンダーも

俺……俺の魂にしか
見えないのか……?




俺の目線に気付いたのか、医者はカレンダーを見て口を開く。



「あれは、退院……つまり、売られた人の日付と数です。」


呆然と黙っていると
医者は突然



メスを取り出した





「今や魂の無い、体だけになった時の骨折って言うのは……治すのが非常に楽です。複雑に折れていたとしても」


医者は俺の体の上にかぶさっていた布団を勢い良く捲る。


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