愛しい遺書
座って片方のスニーカーを履いてると、背後から

「ありがとな」

と聞こえた。

振り返ると明生がおにぎりを片手にモグモグしながら立っていた。

「どーいたしまして」

あたしは素っ気ない態度で返し、もう片方を履いてると、明生が首筋に噛み付いた。あたしは驚いて振り向くと、

「やべ。飯粒ついた」

と言って明生はあたしの首筋に付いたご飯粒を人差し指で潰した。

「ちょっと!取ってよ!」

あたしが爪で剥がそうとすると、明生があたしの手を掴んだ。

「マーキング。」

そう言うと明生はリビングに向かった。

「夜は?ご飯どーすんの?」

あたしは明生の背中に向かって言った。

「夜はいーや。本田さんたちと食いに行く」

たちって言う事はきっとあの女も一緒……。

「そう。じゃあ、頑張って」

あたしは玄関のドアを開けた。明生はおにぎりを持った手を上げて、リビングに消えた。



あたしは自分の部屋に戻り、リビングのソファーに腰掛けると、翔士にリダイヤルした。3回目のコールで電話は繋がった。

「もしもし」

「あ……キキだけど」

「うん。知ってる」

「アハハ。ごめんね?バタバタしてて出られなかった」

「誤んないでよ。ちゃんとかけて来てくれたじゃん」

「……そっか。……どうかした?」

「いや……。何もねぇんだけど、どーしてるかなと思って」

「あたし?今からご飯たべるとこ。翔士は?」

「今、昼休み」

「あ、そっか」

「キキ……土曜は仕事だよな?」

「うん」

「その後って会える?」

「いいけど、終わるの遅いよ?」

「構わねぇよ。じゃあ、空けといて」

「うん。わかった」

「……じゃあ、飯食って」

「アハ。うん、食う。じゃあね」

あたしは電話を切った。

一段落したら本気でお腹が空いて、昼ご飯をマジ食いした。満腹感と共に眠気が襲って来て、あたしは箸を置くとすぐにソファーに横になった。





ポストに郵便物が入る音で目が覚めた。時計を見ると、午後4時を過ぎたばかりだった。

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