愛しい遺書
「……何?急に……」

明生はまっすぐにあたしを見つめたまま、動こうとしない。

「じゃあ、お前の言う愛ってなに?」

――言ったらどうなるの……?

あたしとの関係を、終わらせようとしてるの……?

あたしは恐くなった。それと同時に目から涙が溢れだした。それでも明生はあたしを見つめていた。

「明生……昨日言ったよね?もし本気で好きな女ができたら、その人の名前を体に入れてもいいって……」

「……」

明生は黙ったまま、あたしの目からあふれ出る涙を拭った。

「……あたしなら、それができる……。その人のいいところも、醜いところも、全部含めて自分の一部にできるなら、どんな代償を払ってもいい……。それがあたしの愛だよ……」

泣きじゃくるあたしの頬を優しく撫でる明生の手を、あたしは両手で強く握った。

「いつかちゃんと……明生の荷物になる前に諦めるから……。でも今はまだ嫌いにならないで……」

あたしは子供のように泣いた。それを静止させるかのように、明生は強くあたしに絡み付き、激しく腰を振った。あたしは狂ったように、涙を流しながら鳴いた。










明生の話し声で目が覚めた。

時計を見ると、午後1時。

「3時からカットの客入ってるんだけど、本田さんにお願いしたくて…………マジすか?ありがとうございます。…………あ、大丈夫っす。大したことねぇけど、客に移したらヤバいかなって…………はい。…………はい。じゃあ、お願いします」

明生が仕事を断るなんて。

「具合悪いの……?」

あたしはベッドから降りて電話していた明生の背中に向かって言った。

「わりぃ。起こしちゃったな……。どこも悪くねぇよ。仮病だ」

「仕事断ったの?」

「ああ。今日1日くらいいいだろ」

そう言うと明生はまたベッドに潜ってきた。

「キキ……」

明生はあたしの胸の谷間に顔を埋めて言った。

「何……?」

また何か言われるのかと思い、体が強張った。それに気付いたのか、明生は

「何でもねぇよ。腹へった。どっか食いに行くか」

と、いつもと変わらない調子で言った。

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