愛しい遺書
Ⅴ.サヨナラ
『おはよっ"

キキ来週たんじょーびだねっ

23になるのかぁ〜

今年も期待してて

(´ψψ`)プップー

あっ

きょぉが起きたから、朝ごはん食べさせるヮ

またあとでねん』





翔士と出会って2ヶ月。

来週あたしは23になる。

この2ヶ月の間少しだけ変化した事がある。

マナカが梗平と付き合い始めたのをきっかけに、2人で部屋を借りて一緒に暮らしている。引っ越し祝いを持って新居へ行くと、翔士の家と目と鼻の先だった。マナカたちは毎日のように翔士と行ったり来たりしている。

翔士は初めて抱き合った日以来、毎週土曜日はあたしを店まで送り迎えしてくれる。店が終わると真っ直ぐ翔士の家に行き、約1日半2人で過ごし、月曜日の朝に自分の家に帰って来る。翔士はあたしに対する自分の気持ちを強要する事もなく、独り言だと言いながらあたしの顔を見る度に愛を囁く。だけどあたしは翔士に少しずつ惹かれながらも、まだ明生を愛している。

明生は相変わらず何日かに一度はうちに来て、一緒にお風呂に入り、あたしを求め、朝には必ずめんつゆをかけた目玉焼きでご飯を食べる。あの『バカキキ』事件(?)以来、週末家を空けるあたしに明生は面白くなさそうに当たる時がある。週末が近づくとその衝動が大きくなるようで、意地悪な事を言ったり、わざと背中や太股に歯形が付くくらい強く噛み付く。あたしには明生のその行為が嫉妬から生まれるモノのように感じていた。だけど確認できない。愛を知らない人間に、嫉妬という感情を説明するのは無理な話。そして明生はそういう類の話を聞く耳なんて持っていない。言ったら終わる。だったら言わない方がいい。

そしてあたしは………。

何も変わってない。

あたしだけ。



Love・Maniaは夏になるとパーティーが増える。必然的にあたしの出番も多くなり、いつの間にかあたしを目当てに来る客も多くなった。そういう客の何人かに告られたりもした。もちろんあたしは断るけど、それでもめげないチャレンジャーは、平日の普通の日まで飲みに来てくれる。あたしとしては迷惑だが、店の売上に貢献してくれる彼らに冷たくする事はできない。

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