ハッピー☆ハネムーン
《出発便のご案内を致します。日本航空成田行き10時30分初501便ご利用のお客様は搭乗口8番からご搭乗ください》
それは。
出発のアナウンス。
「そろそろ時間、だな」
まだ頬の火照りがおさまらない。
慶介は時間とチケットを確認すると、慶介は持っていた手帳を鞄にしまい、あたしの手をそっと握り締めた。
「行くか」
そう言って、先に立ち上がった慶介。
あたしも慌ててその後に続いた。
ガラガラとキャリーバッグのキャスターがなんだか寂しいと言っている。
「夢見たいだったなぁ」
あたしはそう言って、もう一度大きな窓の外に目をやる。
そこには南国らしい背の高い椰子の木が、列をなしてどこまでも並んでいる。
大きな葉は、柔らかい風に吹かれてまるで波のように揺れている。
その上に広がる空は今日も高くて、遠くのほうには、まるで羊のような雲が浮かんでいるだけだった。