ネットワークライダー『ザイン』
「ウィルス装甲のままだ。向こうで変身を解除しなかったからだな……しかし現実世界にそのまま出てこれるとは思わなかった」
瀬戸は鏡を見詰めていたが、その身体には言い様のない躍動感が漲(ミナギ)っていた。
「この感じ……まさかリアルでも力が通用するのか?」
瀬戸は半信半疑で目前の壁にパンチを入れる。
「そりゃ!」 ゴガッ!
コンクリートの壁がまるで雪で作ったかのように容易く飛び散った。壁に開いた穴を覗き込み、試しにとパンチを打ち込んでみた自分が一番驚かされている。
瀬戸は両手を広げてマジマジと見つめた。
「凄い。これで怪人でも倒せば俺はヒーローになれるな……。はは、そんなのテレビの中の話か」
そう自嘲気味に呟いた彼は、まさかその冗談が現実となって降り掛かって来ようとは夢にも思っていなかった。
───────とある街角
「雛子。今日バイトあんの? 遊び行かへん?」
「それが麻美(アサミ)ぃ、今日シフト入ってんねん。おでんの什器が新(アタラ)しなるし、店長が説明しに来るらしぃねんけど……抜けられそうもないねん」
ON用の殻を脱ぎ捨て、スッカリOFFモードメイクが完成した二人は、女子トイレの鏡の前で着こなしの最終チェックをしていた。
「ちょっと雛子ぉ、最近付き合いワルない? ツレにはもっと優しくせなっ」
食い下がる麻美をようやく丸め込んで、雛子と呼ばれた少女はバイト先であるコンビニへ急いでいた。
「遅刻やわ。店長に叱られる」
漸く店の雰囲気にも馴染んで来た所だった雛子は、減給対象となる遅刻をする事で『使えないバイト』のレッテルを貼られてしまうのはどうしても避けたかった。
「気は進まへんけどしゃあないわ」
そう言って彼女が入ったのは、つい最近いじめを苦にして女子高生が自殺したという神社の境内だった。
「うっわぁぁ。まだ夕方にもなってへんのになんでこんなに暗いんやろう」
自殺の噂も相まって、そこは余計に不気味な雰囲気を漂わせている。この神社を抜ければ目的のコンビニはすぐ近くだ。雛子はこちらを見ているような気配を感じながら、それと目が合わないように歩調を早める。
「ウヘヘヘヘヘヘ」
「キャァァァァァァァァアッ!」
彼女の声が境内中にこだました。
───────場面は変わって
「ウゲェェエッ、ゴバッ、ゲボォゥエエ!」