ネットワークライダー『ザイン』

 ネットライドを終えて、瀬戸は4度目の激しい吐き気に襲われていた。

 運悪く装甲を解く前に嘔吐した為、自らの吐瀉物で溺死寸前の事態になったのを漸く切り抜けた彼は、その後シャワーは浴びたものの自らにこびりついたコクの有る酸性臭を嗅ぐ度、こうして嘔吐を繰り返しているのだった。


「ぐはっ、ハァハァハァッも、もう勘弁してくれ……ハァッ、ハァッ」


 勢い良く流れる水音を背に、息も絶え絶えの彼はドアノブにもたれ掛かりながら姿を現した。額には玉のような脂汗を浮かべ、背中は曲がり、一糸まとわぬ裸である。

恐らくシャワーを浴びてすぐにまた、吐き気が襲ってきたのだろう。ジム通いで鍛えられた肉体は美しく筋肉を隆起させてはいるが、如何せん男の無防備な姿は滑稽にしか写らない。


「ハァックシュン、クシンッ! 畜生鴻上の奴、肝心な事は何も伝えないままで逝きやがって……ネット世界で遭ったらただでは済まさんぞ!」


 満足に相手もしないで鴻上をネット世界に葬ったのは、他ならぬ瀬戸自身だというのに、そんな事はすっかり棚に上げて怒りまくっている。

 尤もどんな形態のソフトになってさ迷っているかも解らない鴻上に会っても、瀬戸に彼と解るかは疑問だが……。


「こんなにネット酔いが辛いなんて、思いもよらなかった。ウゲッ、ゥプ!」


 彼はまた口を押さえ、慌ててトイレに駆け込んでいた。



───────例の神社



「ほれほれ、よおく見ろ。おぢさんのは大きいだろう」


 雛子はコートの前を大きく開いて股間を見せびらかしている男に、壁際まで追い詰められていた。


「やめて……下さい。

『こっちはバイト行かなあかんのに、ちっさいイチモツぶら下げて、このオッサンは!』

 やめて。

 ……やめぃ言うとるやろがこんドアホ!」


 雛子はトウキックをそのキタナイ物にクリーンヒットさせ、一目散に走り出した。


「イデデで! この野郎っ待ちやがれ! いで、ああっ! ああっ! ギャァァアアアアアッ!」


「なんやオッサン、ちんちん蹴られた位で大袈裟やな」


 雛子は眉をひそめて振り返ったが、その視線の先には肩口をがっぽりと喰い千切られたさっきの変質者が、顔面を蒼白にしてよろめいている。



───────その頃副総帥のイゾルデは



「まだ鴻上は見付からないのか」


「フォー!」


 迷彩柄の全身タイツに身を包んだオペレーターが奇声を上げる。



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